ルシラさんは2024年3月、ご主人の5年間の日本駐在に帯同し来日されました。現在は、子育てを終え、自分のための有意義な時間を満喫されています。
そんなルシラさんに、日本での生活や印象、体験したいことなどを伺いました。
― 家族のルーツ
ルシラさんは、ブラジルのサンパウロご出身です。母方のおじい様が群馬県、おばあ様は熊本県出身で、お2人はブラジルで出会ってご結婚されたそうです。ご両親はブラジル育ち。ルシラさんご自身は、ブラジルでご結婚後、18年前にアメリカのカリフォルニアにご家族で移住されました。日本にルーツがあることもあり、ご主人から日本駐在の話を聞いた時もすぐに賛同しました。
― 日本語は難しい
日本語は、来日前にカリフォルニアのコミュニティカレッジで勉強されたそうです。「スペイン語はポルトガル語と言語間距離が近いので、8割ぐらいはわかります。英語も距離が近いと思います。ですが、日本語は、むずかしい。私に日本語を教えてくれなかった母の失敗です。」来日後はGOCAの初級日本語講座も受講されました。
レストランでは、日本語のメニューがわからず、想像していたものと違うものが出てくることもあるそうです。「夫と焼き肉店に初めて行った時、凍った状態の魚が出てきましたが、焼いて食べるものだとは知らずに、何だか冷たいなと思いながら間違って食べてしまいました。」そんな体験も笑ってお話してくれました。
― 日本での生活
数年前に観光で来日されたこともあるルシラさん。日本での生活について伺いました。
取材日が暑かったせいか、天気の話になると「日本の夏は暑いですが、サンパウロの夏も暑いです。夏の間は15時を過ぎると毎日のように15分から20分のスコールが来て、雨が止んだ後は、ムシムシします。」とルシラさん。
「アメリカでは車生活でしたが、日本では車のない生活を選びました。移動には電車を使っています。電車は正確で、スマホにアプリを入れているので移動に便利です。車のない生活に不安もありましたが、すぐに適応することができました。車があったとしても、日本の駐車場はコンパクトで、私には駐車できそうにありません。自転車も飛び出してくるし。日本人は器用に駐車していてすごいです。」
金曜日の夜は、近所のライブカフェレストランで音楽イベントを楽しんでいます。
「最初にお店を訪れた時に英語の歌を、2回目に訪れた時にはブラジルの歌を美しい声で歌ってくれたボーカルトレーナーの店員さんがいました。今はその方に、歌を習っています。」
また、社会との関わりを持ちたいと考えているそうです。
ブラジルからカリフォルニアに移住した際、保護者がこどもの送迎だけでなく、社会的に教育と関わっていることに感銘を受け、お子さんが小学生の時はルシラさんも横断歩道の見守りの仕事をしたそうです。
「日本でも社会とつながりを持って生活したいと考え、近所の清掃活動に夫と参加しました。私も夫も日本語がよくわかりませんが、メンバーの方が親切に掃除の方法を教えてくれました。」
― 日本でチャレンジしたいこと
「本当は仕事がしたいですが、日本語がまだ十分ではありません。カリフォルニアでは、子育てをしながら仕事をしてきましたが、こども達も成長し、今は夫と2人の生活で時間もたくさんあります。」
ハンドメイドが好きなルシラさん。「家で刺繡をしたり、自分や娘が作った陶芸作品に金継ぎをしたりしています。」金継ぎは日本の独自の文化であると思っていましたが、いまでは海外の方にも知られているのですね。
9月からは陶芸教室に通う予定です。「“salt pig”(塩入れ)と“butter bell”(バターを常温保存できる容器)を作りたいです。どちらもアメリカでは一般的なものなのですが、日本では見かけないので、作りたいと思っています。」
また、日本へ引っ越した時、お嬢さんにミシンを譲られたそうで、新しいミシンを買いたいとのこと。「(ミシンは)上手ではないけれど好きです。日本の絞り染めも体験したいです。」
運動も好きで、(現在は改修工事中のため使用できませんが)大田区の総合体育館で運動もしています。「マシーンを使った筋トレより、ズンバ(ラテン系のエアロビに似たエクササイズ)やヨガの方が、楽しい気持ちで体を動かせるし、心身がリラックスするので好きです。」
そして、旅行も楽しまれています。
「来日してすぐの4月に、群馬県みなかみ町にあるたくみの里(伝統文化体験ができる観光施設)で夫と陶芸や美しい日本の景観を楽しみました。」益子町では益子焼、鎌倉では大仏を見学。ご子息が来日された際は、一緒に名古屋やジブリパーク、大阪、奈良ではたくさんのかわいい鹿を見たそうです。10月にはご両親が訪日予定とのこと。久しぶりの再会が日本でなんて素敵ですね。「北海道と沖縄にも行ってみたいです。」とも。ルシラさんなら、5年間の滞在で日本全国制覇は夢じゃない!ですね。
― インタビューを終えて
最後に、「大田区で好きな場所はGOCAです。」と嬉しい言葉をいただきました。異国で暮らしたことがある人は、自身がエイリアン(異質な存在)だと感じた経験が少なからずあると思います。そんな暮らしの中で、好きな場所があることは、その地で築く生活基盤の貴重な一歩だと思います。
行動的で、社交的、失敗も経験の一つとして楽しめるルシラさん。自分らしく、飾らないお人柄が素敵で、私もそうありたいなと思いました。日本での5年間を楽しんでください!
(隣の外国人実行委員 森脇)